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タックス・ヘブン「Tax Haven」とは、日本語に直訳すると「税金避難所」を意味し、一般的には「租税回避地」と訳されます。

元来は、中継貿易地として経済を活性化させる目的で、 各国・地域政府が徴税優遇制度を実施していましたが、70年代より、海外籍の個人や法人を問わず、その 所得に対して、すべての課税を免除(もしくは大幅減額)するようになりました。 このようにして同制度は、域内の雇用促進、グローバル経済社会での小国・自治区なりの「生き残り」策として確立されていきます。

その発展に伴い、同地域への法人設立や移住手続も簡素化されるようになり、 多くの企業や個人、そのマネーを惹きつけることになります。 特に、移動の容易な「マネー」を操る金融ビジネスがここに目を向けるようになりました。

こうした背景から、タックスヘブン国や地域は オフショア金融センター(Offshore Financial Center)と呼ばれるようになり、名だたる多国籍企業、金融グループ、 投資事業組合、大資本家や政治家らを中心に、多くの資金を集める結果となっています。直接、現地にて居住せずとも、経済活動が許 されている、もしくは資産を保管できるという意味で、オフショア=「沖合い」のみでの呼称でも認知されるよう になり、これに合わせて、数々の資産保全スキームも考案されていきました。

世銀統計によれば、沖縄県 西表島 程度の面積しかない英領ケイマン諸島(270km2、人口4万)は、世界の預かり資産残高において、 東京、ロンドン、ニューヨーク、香港に次ぐ世界第五位の規模とされています(約 90兆円)。ここに、世界の一流と目される金融グループを 含め、約600あまりの金融機関が拠点を置いています。

タックスヘブンとまでは行かずとも、 欧州、シンガポール、香港、中国はじめ、多くの国々で今や、法人税率の 減税が進んでいます。各国・地域とも、海外投資を受け入れ、自国経済の新 興に役立てようと、優遇税制を導入しているわけです。日本も消費税増税と 法人税減税の同時実施の必要性が叫ばれていますが、21世紀中盤の国際競争 時代に向け、出遅れをとらないように注意すべきでしょう。

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タックス・ヘブン制度 をめぐる世界の動き


現在、全世界には 60以上のタックス・ヘブン地域・国が存在しています。 しかし、2000年、OECD(経済協力開発機構[別称:先進国クラブ]、本部パリ)によるマネーロンダリング犯罪対策、公正な課税 制度確立に向けた制裁を受け、このうちの 34ヶ国、地域がブラックリ スト化されました(下表参照)。

英領ケイマン諸島、バミューダ、キプルス、マルタ、モーリシャス、サン・マ リノの6カ国・地域は、OECDとの合意により、このブラックリスト掲載を免れています。 しかし、合意内容の発効により、これらの国・地域は「透明性高い国際的課税水準の確立」、 「預り資産内容等の情報共有」、「公正な課税率の設定」を義務付けられることになりました。

こうしたタックスヘブン、マネーロンダリングをめぐる国際間の締め付け はますます強化され、近年では、スイス金融機関の絶対的匿秘主義にもメスが入れ られました(非居住者による書面での口座開設申請不可、犯罪に関わる口座情報の開 示義務の制定、など)。

アンドラ グレナダ ガーンジー(英)
マン島(英) パナマ リヒテンシュタイン
モナコ バハレーン モルディブ
マーシャル諸島 ナウル アンギラ(英)
サモア トンガ バヌアツ
ニウエ(ニュージーランド) セント・ルシア ヴァージン諸島(英)
セント・クリストファー・ネイヴィース アンティグア・バーブーダ セント・ビンセント及びグレナディーン諸島
ジャージー(英) アルバ(蘭) ドミニカ国
タークス諸島・カイコス諸島(英) ヴァージン諸島(米) クック諸島(ニュージーランド)
ジブラルタル(英) モンセラット(英) アンティル(蘭)
バハマ バルバドス ベリーズ
セイシェル リベリア
              外務省資料 参照


 タックスヘブン制度をめぐる近況

タックスヘブン制度を採用する国・地域では、原則、個人の所得税、 利子・配当税、相続税、株式等の譲渡益税、法人の事業税などが免除、もしくは低位に抑えられています。 こうした恩恵をねらい、世界中の富裕層、ビジネス・マネーが流入しています。特に、物理的な商品移動等のない、 保険、投資業務などの金融ビジネス、さらに各種リース業や、特許・著作権等の知財サービス業には最適な 環境といえます。所謂、ペーパーカンパニーという形で法人を設立し、実際のビジネスの運営は 別の場所で操作するパターンが圧倒的です。世界の大企業はほぼすべてこうしたペーパーカンパニーを 何らかの形で有しています。

こうしたタックスヘブン制度を利用し、多くの不正脱税、マネーロンダリン犯 罪が行われてきたのは容易に想像できます。諸外国はこのタックスシェルターへの 対抗策として、スキーム情報申告・登録制度、資料保存義務規定、移転価格対策、納税者番号 制度などを実施し、さらに先進国クラブOECDとして団結し、情報公開に非協力な国々へ の圧力を強めるなど、あらゆる手段を講じています。

日本では、このタックスシェルター制度への対抗策として、移転価格税制、タックスヘブン対策 税制という、後追い型の追及手段が主たるものであり、他の先進国に遅れを取っていることは否めません。

 日本のタックスヘブン対策

A, 移転価格対策税制
海外の関連企業との取引時、その取引価格を通常の価格とは異なる額(移転 価格)に設定することにより、一方の利益を他方に移転することができます。 このような利益の付け替え益をタックスヘブン子会社へプールすることを防ぐもの。 通常の独立企業間での取引価格と比較し、所得申告を修正させます。 ただし、ここでは海外子会社やタックスヘブン子会社に着目しているわけで はないので、適正な価格の範囲であれば、全く問題はありません。かつまた、価格修正 を受けても、私法上の取引自体は否認されません。あくまでも 取引価格の不当値下げ、上げにフォーカスしたもの、といえます。

B, タックスヘブン対策税制
海外の関連企業(特定子会社等と呼ばれる)の利益プールという、ストック面に フォーカスします。所得課税率が25%以下の国や地域に設立された法人で、かつまた、 日本国内に居住する法人、もしくは個人が発行済株式等の50%超を直接又は間接 に保有している場合、その留保所得分を日本で合算して確定申告する必要が あります。留保所得はその法人の決算期に毎年、金額が確定され、その年度内に 国内法人や居住者の合算所得とされる仕組みです。利益プールにより課税繰り延べを 防ぎ、年度ごとの課税額を確定させます。ただし、海外子会社が実体のある 事業を行っている等、一定の要件(4つの適用除外基準)を満たす場合 には、合算課税の適用はありません。



 日本国内の居住者、内国法人の海外所得

通常、日本国居住者(国内に住民票を有する者)は、全世界中で発生させた所得に対し、 日本にて確定申告・納税義務が定められています。国内法人も同様です。

それでは、日本に居住を構え、タックスヘブン地域にペーパーカンパニーのみ設立させて、 そこへ資産を移転し、運用しようとする意見が聞かれますが、前項の「タックスヘブン 税制」に関する所得税法上の規定が適用され、日本国内にて出資分に相応する所得分 は申告することになります(50%以上の場合のみ)。

ただし、注意すべき点は、海外法人設立等に関係なく、単に資産を海外に移した だけでは課税対象とはならず、あくまでも、何らかの増減が生じた場合にのみ、 初めて納税手続が必要になります。

なお、日本での国内非居住者となった場合、タックスヘブン等の海外所得 に関する日本への納税義務は一切ありません。ただし、日本国内にて発生さ せた諸利益に対してのみ、課税負担を負うことになります(半面、新に移住した居住 国の税法に従うことになります)。
                                            
 タックスヘブン制度をめぐる近年の事件

2005年3月 「武富士」前会長 長男の海外移住偽装・“脱税”事件ー課税処分取消

「武富士」創業者のTT夫妻は、97年12月、オランダ法人 「YSTインベストメンツ」を設立する。同夫妻は証券会社を通じ、両名が所有する武富士 株 1569万株を 約1000億で「YST社」に売却した。99年12月に「YST社」株の90%分を、 夫妻は長男に贈与する。

98年末に「武富士」が東証一部に上場していたため、「YST社」株の価値 も上昇、贈与した財産は1600億円余りにのぼっていた。

一方、長男は「武富士」の取締役を兼ねたまま、97年に香港に移住したこ とになっていた。しかし、彼には現地法人代表としての“勤務実態”がほ とんど無かった上、主な財産は国内財産にあたる「武富士」株などだった ことから国税局は「香港への入国は、海外居住の形をとって税負担を免れる ため」と判断した模様。(香港居住者の贈与・相続資産、海外所得は非課税)

これが、贈与 1,600億円の無申告と指摘され、史上最高の 1,300億円 の追徴処分となったのである。99年における「YST社」株の90%分贈与を 申告漏れとされたのだった。

2007年5月、当時の税法では日本人でも海外に住んでいれば、海外財産の贈与は 非課税扱いとなるため(現在はすべて課税対象)、東京地裁は課税処分取消を命令。

2001年12月、米エネルギー大手 エンロンの破綻

テキサス州ヒューストンに本社を置いたエンロンは、かつてのエネルギー供給会社(法人向け)から、 1990年代中盤より同卸会社、もしくは「エネルギー商社」ビジネス・モデルへ大きく舵を切った。 最盛期には、ガスと電力の卸売業で、全米市場の4分の1のシェアを占め、41カ国に海外 進出を果たす。これらの牽引役となったのが、自身が開始した主としてエネルギー関連の「デリバテ ィブ(金融派生商品)取引」ビジネスであった。

後になり、この取引で大きな損失を出し続け、さらに折からのITバブル崩壊による不況で全事業に 渡って、大きく赤字を累積させる。しかし、この赤字分を本社に計上することなく、別の子会社に押し付 けることで、自身の粉飾決算を現出させていったのである。

エンロン本体の命脈が短いと悟った経営陣は、自身の保有する株式を即刻、売却、 さらには社内の重要資産を、子会社約2,832社へ振り分けていく(このうち、ケイマン諸島などのタックスヘブン地域に 登記された子会社は874社)。所謂、インサイダー取引と資産隠しである。現在も、これらの実体 なき子会社群に莫大な資金がプールされているとされる。

2001年8月、ロシア・マフィアによるマネーロンダリング事件発覚(ナウル経由)

ロシアの組織的犯罪グループが、合計 700億ドル(約8兆4000億円)以上の資金を、ニューヨーク銀行 を通して洗浄させるために、ナウル共和国に登記されたオフショア銀行を利用して送金 していた事実が暴露される。

ナウル(オセアニア地域)は世界最小の共和国として知られ、人口は1.2万人。ここにオフショア銀行が 400ほど登記されている。すべて、政府管理下の郵便ボックス1つのみのペーパー・バンク であり、これがマーネーロンダリングの温床となった模様。OECDはこれを問題視し、 改善のための強い勧告を出す。ドイツ銀行などは自主的に同国を経由する資金は取扱いを 拒否するなどを発表。

1999年9月、プリンストン債に絡む脱税事件発覚(ケイマン諸島、香港経由)

90年代後半に日本経済界の一躍人気者となった、米国ファンド・マネージャー兼アナリストの アームストロングは、バブル破綻の後遺症に悩む多くの日本企業へ、自身設立の経済研究所発行の プリンストン債(単なる私募債)を売り込んでいく。英クレスベール証券東京支店 (本社:ケイマン諸島)を通じて、総額 1,200億円を集めた。すぐに、破綻。すべての債権証書は 紙切れとなる。

この際、日本側の販売窓口役となったのが同証券東京支店長S及び、ヤクルト副 社長Kである。彼らは販売紹介分から5%程度をリベートとして取得、K副社長は特にこれを 自身設立のケイマン諸島法人名義の香港銀行口座へ振り込ませていた。自身で 香港へ行っては現金持参での帰国を繰り返す。総額 5億円のリベート代金は 個人的な資産運用、遊興費等に消されたという。同年12月、所得税法違反(脱税)、及び 業務上横領罪で起訴される。


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